しかし近年、どうも好奇心にかられて無謀なチャレンジをするようになっておりまして、このまま行きますと、遺体も見つからないような場所で最期を迎えるような気がしてきました。
ところで、青の洞窟を堪能した後。氷の海を観に行き、その後もう一つの青を求め、シルフラに潜りました。
雪原の中の小さな小屋でドライスーツに着替え、異世界への入口まで歩いて向かいます。とぼとぼと歩く姿はペンギンです。
足下がつるつるすべります。
水温は2度。しかし陸の上はマイナス10度。風も容赦なく吹き付けます。
ついにこんな格好でこんなところをよぼよぼ歩くことになろうとは、
人生で一番無様な格好で歩きながら、思い出さんでもいい余計な事ばかり頭をよぎります。
不幸は、寒い、ひもじい、手元不如意、の順でくるんだっけ・・・・
何でも凍る冷蔵庫、直るかな・・・•(◞≼●≽◟◞౪◟◞≼●≽◟)
さて、縁起でもないことばかり浮かぶついでに縁起でもない話を。
一定期間行方不明の人を死亡したものとして扱う民法上の制度に失踪宣告(民法30条)というのがあります。これは普通失踪で7年、特別失踪で危難が去って1年という時間の経過を要件とすることと、裁判所への審判申立が必要になります。
ですから、時間と手間が少しかかります。
登山に出かけた夫が山で遭難し、遺体は出ないが間違いなく死亡は確実だろう、という場合、残された妻が七年も待たなければならないとすると非常に困ることになります。相続だってすぐに開始しないと遺族の生活に支障が生じる場合があります。
実は、確実に亡くなっているであろう場合には認定死亡(戸籍法89条)という制度があります。官公庁の調べで亡くなっているであろうことが明らかな場合には、死亡したものとして届け出る制度です。
これによって相続が開始し、妻は再婚可能になります。
東日本大震災の場合、まだご遺体が見つかっていない方もいらっしゃいます。ですから行方不明の方に、この認定死亡制度が適用され、残された遺族の生活再建をスムーズにするように図られています。
さて、命からがら潜った氷の下は、それはそれは美しい青い世界でした。
半端なく寒いですが、きたことは後悔しない、神秘の場所でした。
ペンギン一同、皆で感動しました。
分相応な力しか出さないつもりの私も我を忘れて泳ぎました。
当然ですが、帰りは行きよりはるかにつらい道のりでした。
タンクを背負い、ペンギンどもは無口で歩きました。
もう、何でも凍らせる冷蔵庫もタンパク質を焦がすドライヤーのことも頭によぎりませんでした。
冒険には体力が必要です。私はいくつまでこういう無謀な経験ができるだろうか。
そろそろ身の程を知った方がいいんじゃないか
それよりそもそも冷蔵庫直す必要なくなりそう・・・・
風の音が読経に聞こえます。
熱烈歓迎生前香典俗名菊谷淳子・・・・
寒さと疲れとで、ふっと気が遠くなりそうになった時、後ろのペンギンがさっと手をさしのべてくれました。
御年86歳のニュージーランドから来たおばちゃんでした。
(◞≼●≽◟◞౪◟◞≼●≽◟)
私の最期はバミューダ海域になりそうです
平成28年2月12日 文責 弁護士 菊谷淳子