ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

星に願いを

  学生の頃家庭教師していましたが、とんでも通信欄を作り、どんな質問にもなんとか答える、というお楽しみコーナーを設けていました。おもしろかったです。みんなあれこれ知恵を絞って質問を考えてくれたようですが、その中に   七夕のお願いはいつ頃かないますか      という、大変シュールな質問を受けたことがあります。   あの人たちは自分達のことでいっぱいいっぱいですよ        ところで、夫婦には同居義務というものがあります(民法752条)。日本の家族法の考え方として夫婦は相互に協力して生活していくのだという考えが背景にあります。この考え方自体は決して普遍的な考え方ではありません。血縁を重視する母系社会の国では別居婚は当然の前提ですし、我が国でも千年前は通い婚でした。あくまで現代の日本の家族法の考え方です。   では同居義務というからには「いやでも一緒に住め」と強制することはできるのでしょうか。   民法752条で規定されている同居義務は義務と言っても契約上の義務と異なって、これを履行しない場合に強制執行の対象になるものではありません。夫婦の関係がすでに完全に破たんしている場合にまで同居を強制するものではありません。   では損害賠償の対象になるでしょうか   実はよほど特殊な事情がない限り同居義務違反では損害賠償の対象になりません。同居義務違反をした結果離婚に至った場合でしたら離婚の責任ありとして離婚慰謝料の対象になりえます。      では同居義務違反を自らしている妻から生活費を請求された場合はどうでしょうか。   同居義務と婚姻費用分担とは別の問題なので原則として婚姻費用の支払い義務はあります。ただ不合理な別居により生活費の二重払いを強制されるような場合まで婚姻費用が認められることはありません。   他方で、同居を拒否できる正当な事由がある場合には同居義務はありません。たとえば夫のDVや、療養看護の必要性がある場合の別居などは認められます。   民法上、嫌な相手と同居することや、無理やり同居することまで要求されてはいない、ということです。   同居義務はあくまで一方は同居したいと考えているのに他方が同居に応じない場合の話ですからもちろん、当事者双方が合意の上で別居婚を続ける場合は全く問題ありません。 ところで、以下は私の当時の回答です 「 私の経験では10月1日ころと思われます。   私は、自称不遇の幼少期、転校に憧れ毎年、下記のような願い事をしていました               記       父が転勤になりますように退職・解雇は不可)  七夕様は出血大サービスしてくれ、父は割とよく転勤はしました。 しかし私は全く転校できませんでした。父が異動になった先は家族の同行できない国ばかりだったからです。  お願いは正確に、そして具体的にしなければなりません。 」     平成24年7月6日 文責 弁護士 菊谷淳子