ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

となり村のおとぎ話③

  赤頭巾の話を裏付ける証拠がみつからないまま、ガチ否認の赤頭巾は起訴され、公判前整理手続に付され、長い長い時間がかかってようやく第1回公判が開かれました。  物騒な時代に家族殺人、芸能人の結婚よりはるかに面白い、ごほ、けしからん話題ですから、報道陣も沢山詰めかけました。 弁護人は冒頭陳述、つまり弁護側が証拠によって立証する弁護側のストーリーを、述べました。土佐鶴弁護士は、大変悩んだすえ、赤頭巾の言うとおりのストーリーを述べました。日本語を話す狼さんのお話です。 その様子はすぐにニュースで配信されました。  情報番組でもコメンテーターが「二ートの孫が祖母を残忍な手口で惨殺しておいて、謝罪の色も見せずに、不合理な弁解をしている、被告人に不合理な弁解をさせている土佐鶴弁護士はけしからんから懲戒請求を全国からしよう!何十万、何百万の請求をすれば弁護士会もみとめるでしょう」と呼びかけました。この呼びかけはすぐにネットでも広がり、善男善女が懲戒請求を心に誓いました。  ほどなくして、土佐鶴弁護士の所属する弁護士会には善男善女からの土佐鶴弁護士に対する懲戒請求本当に何十万通も来ました。 土佐鶴弁護士の所属するドコデモナイ県弁護士会はわずか100名程の規模の小さな弁護士会ですから困ってしまいました。全ての懲戒請求について真面目に書留郵便で土佐鶴弁護士とやり取りしなければなりません。郵便料金も、数十万通にもなりますと大変な負担です。  そして土佐鶴弁護士も、これらへの対応をやむなくされました。その数は膨大なものになりますから、依頼者からお金をぼったくることもなく個人事務所で細々と営業していた土佐鶴弁護士がその膨大な数の請求へのお返事をいちいち書かなければならないことは本当に大変でした。土佐鶴弁護士の事務所の業務も停滞しました。そればかりか風評被害で仕事も減りました。  最初は弁護士会も内容は知っていましたから 、これで懲戒なんてありえないな、 と内心タカをくくっていましたが、これだけの数が来ると小さな弁護士会は機能マヒし、経費にも耐えられなくなり、 正直頼むからもうやめてくれ、 という気持ちになり、 えいや、 っと土佐鶴弁護士を業務停止2か月の処分にしました。 で、赤頭巾には新しい弁護士がつき、この人は懲戒請求されないよう不合理と思われる弁解には口をつぐんで赤頭巾には懲役13年の刑が確定しました。(続く)   平成24年7月2日 文責 弁護士 菊谷淳子