ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

笑うしゃれこうべ

その日、私は健康で文化的な最低限度の週末を過ごしているはずでした。

 

あの味噌汁食べなかったら•(΄◞ิ౪◟ิ‵ )

 

 水を飲んでも吐くのでどんどん体力を消耗していきます。中川に助けを求めようにも携帯電話は事務所。クーラーのリモコンどこだろう。もう動けないけど。この暑さなら一週間から10日くらいで白骨化かなあ。

 容赦なく何度も襲いくる吐き気と脱水症状に苦しみながら、ぼんやりそんなことを考えます。 頭部レントゲンを撮って知りましたが、私のしゃれこうべはちょっと間が抜けています。ちっとも賢そうではありません。

 笑ってなくても笑っているような顔で、夜道に突然出てきてもちっとも怖くない。私思うのですが、骨格標本に出てくる頭蓋骨、あれはかなり美人の方のしゃれこうべです。一般人はああはなりません。

 

 第一発見者中川に私だと気づいてもらえるか心配になってきます。名刺を握りしめながら横たわるか・・・・ 衰弱しながら、だんだんと意識が遠のいてきました。

 

 さて、ホネについての問題です。 あるモテおじいさんが亡くなりました。おじいさんには二度の結婚歴があり、前妻との間に子供が一人、後妻とは正式に離婚していませんが、亡くなるまでの20年間寄り添って暮らし介護もした愛人がいます。おじいさんの遺骨を前妻の子と、後妻と。愛人の三人が皆、自分が欲しい、と言ったとすると誰がおじいさんの遺骨を引きとることができるのでしょうか

 

 遺骨は相続財産には含まれず、祭祀を承継する者、簡単に言うと仏事などを主になって執り行うべき立場の人が引き継ぐことになっています。その祭祀承継者とはまず第一になくなった人が遺言で指定していればその意思が尊重されて決めます。

 2番目にその地域の慣習で、それでもだめなら家庭裁判所が決めます。

 

 祭祀承継者に、法廷相続人ではない愛人がなることができるか、というと不可能ではありません。 裁判例では、祭祀の承継者を決めるについて「死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから,被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって,被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち,被相続人が生存していたのであればおそらく指定したものであろう者をその承継者と定めるのが相当である」としており(東京高裁平成18年4月19日)、相続人であることを要件としていませんので、上記の例では愛人でも要件を満たせばありえないわけではないのです。

 

 さて、数時間後、意識を取り戻しました。どうにか冷蔵庫に一こあった桃を切り、何時間かぶりに水分を口にしました。ああ、まだ私生きてます。そうだ 俗名菊谷淳子であるうちに、相続人に見られたくない遺品は整理しておこう。

 

お香典は生前に限り絶賛受付中です(⊙◞౪◟⊙)♪  

    平成27年8月6日  文責 弁護士 菊谷淳子