ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

まりちゃんの憂鬱

 小学3年生の時、当時同級生の間でバレエ(踊る方)漫画がはやっていました。

 特に人気があったのは小学館の「小学3年生」に連載されていた「ナントカまりちゃん」という漫画でした。

 

 当時私は松本清張に心酔していたので、女癖の悪い娘ムコを大胆な方法で殺害する初老の資産家や、店に現れた若いホステスに入れ込んで転落していく小間物屋の初老の店主、に夢中。まりちゃんにもバレエにも興味はありませんでした。リアリティないですもん。

 でも、おつきあいがありますので(΄◞ิ౪◟ิ‵ ) ある日借りて読んでみることにしました。

 

 おそろしい話でした(΄◞ิ౪◟ิ‵ )

 

 まりちゃんは、生き別れのママ(おフランスで活躍する有名バレリーナ)の結婚式があると聞きつけ、その教会へむかいます。で。ママの結婚式に間に合い、祝福するのかと思いきや! 教会横の高い木に登って「ママ~やめて~」と窓から絶叫。

 

は?(◞≼●≽◟◞౪◟◞≼●≽◟)

 

でママはその言葉を聞いて結婚するのをやめます~と言って木に登りまりちゃんの元へ~となるのですが、いかんせんママは中年

 

枝が折れて落下 足をけがして二度とバレエができなくなります。

 

みんなこんなおっかない話に夢中なのか。 あのかわいらしいNちゃんも、Aちゃんも、毎月こんな恐ろしい話を読んでいたのか。 清張先生もびっくり仰天のこの展開にただただ腰を抜かす菊谷

 

子供は私だけか・・・・(΄◞ิ౪◟ิ‵ )

 

 ところで「子供のしたこと」について民法上では責任規定があります(民法714条)。ではどこまで親が責任を負うのか。

 例えば学校にいるときに子供がしたことに親に責任は発生するのか。 先日、小学6年生の少年が校庭でサッカーボールをゴールに向けて蹴ったところ、そのボールが校外の道路に飛び出し、たまたま通りかかった自転車のおじいさんがボールをよけようとして転倒して怪我をし、認知症を発症してその1年後に亡くなったという事件で最高裁判所の判決がでました。

 最高裁判所は本事案において、サッカーゴールの設置場所、周辺の交通事情、少年のサッカーボールを蹴った行為の危険性について具体的にかなり詳細に事実認定を行った上で、当該少年の行為は通常は人に危険が及ぶものではないとし、親の監督責任が及ばないと判断しました。

 注意しなければならないのは、学校でしたことだから親は責任を負わなくてもよい、という判決ではないことです。私が非常に危惧するのはこの判決のニュースのタイトルの多くが、 「子どもが蹴ったサッカーボールで交通事故 親の責任認めず」という表現になっており、あたかもこういう事案では親に責任がないと裁判所がみとめたかのように読めることです。

 最高裁判所は、直接監督下にない子供への親の監督責任について 「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」とかなり限定しています。

 が、一般論として責任自体は認めています。 ところで、直接監督下にない子供のした行為を成人に達するまで親が全責任を負う、というのはあまりにも過酷だとは私も思います。ただ、同じことは認知症の高齢者についても同じではないか、と私は思います。いや、その監督はもっと困難です

 しかし、認知症患者の起こした事故については裁判所は厳しいのです。認知症患者の徘徊中に引き起こした列車事故について介護していた妻に損害賠償義務を認めた裁判例名古屋高裁平成26年4月24日)があります。私は高齢者の介護をする家族に対しても裁判所の救済があればいいなと願っています。

 

 さて、まりちゃんの踊れなくなったまりちゃんのママは悲嘆にくれますが、まりちゃんを責めません。 ええええ?それだけ?

 

踊れなくなったんなら安いドリルでも買ってきてさっさと何か勉強せんかい(◞≼థ≽◟◞౪◟◞≼థ≽◟)!

 

と怒り狂っていたあんたに恐怖を感じたわと三児の母になったAちゃんは今でも苦笑しています。  

 平成27年5月5日  文責 弁護士 菊谷 淳子