放浪の名付け
昔々、九州は福岡の地に一人の男の子が生まれました。
男の子は、長男だったのに、当時有名俳優だった菅原★ニという人物にあやかって、★ニと名付けられました。
男の子が大学に入学した頃、事件は起きました。
あろうことかその俳優菅原★二が「菅原★次」に改名をしたのです。
縁起の良くない名前だったとかで(΄◞ิ౪◟ิ‵ )
それから程なくして、★二青年がラジオを聞いていますと、
「僕は○○★二という名前なのですがどうも運が悪くて…改名した方がいいでしょうか」という人生相談があり、青年が耳をそばだてて(⊙◞౪◟⊙)きいていますと
回答はなんと、「変えた方がいいでしょう」でした。
新聞の人生相談コーナーでもおなじような質問があって
回答はまさかの「変えた方がいいでしょう」でした。
青年は考えました。
第一志望にとおらなかったのは名前がわるかったのか!(⊙◞౪◟⊙)
それは別の理由でないかと思われますが、青年は迷うことなく通称名を変えました。
さて、1993年、ある夫婦が我が子を「悪魔」と命名し、市役所に届け出ました。市役所は、「なにこれDQN…」と内心は絶句しながらも、とりあえず届けは受理し、良識ある法務局に相談しました。
法務局は「常用漢字には当てはまるが、子の福祉を害する畏れがあり、親権の乱用である」として一旦受理した戸籍上の名前を「名未定」にしてもうちょっとまともな名前に追完させろと市役所に言いました。市役所はそれもそうだなとおもい、夫婦に伝え、一旦戸籍に記載した「悪魔」の名前を抹消しました。
夫婦は一度受理された戸籍に記載された名前を法定手続を経ずに抹消することは許されないと市役所を訴えました。
なぜか誤解されているようですが、裁判所はこう言いました。
この夫婦の名付けは命名権の濫用、簡単にいうとやりすぎね。
悪魔ってなんぼなんでもやりすぎでしょ。
ここまでおかしい名前なんだから市役所はその場で不受理にすればよかったのよ
それをその場では受理しておいて、後で法務局にお伺いをたてて戸籍を抹消させるのは手続き違反よ
この裁判、何かと誤解されているようですが、裁判所も悪魔という命名は命名権の濫用であることはしっかり認定しています。親だから何をつけてもいいということを言ったわけではないのです。
しかし、市役所の受理段階で、その判断を要求するのは、少し酷な気がします。
悪魔、ではなく神とか仏だったら…
窓口段階で受理するかどうか決めなさい、っていわれても…
そうしますと、市役所のとるべき対応は、一つです。
臭太郎くんだろうが、帝王くんだろうが、泡姫ちゃんだろうが、世府連(せふれ)ちゃんだろうが、受理すればいいのです。
家庭裁判所の基本思想、「下々の家庭のなかのことなんぞ、しるか」を市役所も守れ、という結果になってしまうのです。
裁判所の判断は形式的には説得力のあるものです。しかし子の福祉を実質的に考えますと、一つの窓口だけに重荷を負わせるのは間違いではないかと思います。
ちなみに両親はその後、読み方は変えないまま別の当て字を使うことに同意し、騒動は収束しました.
この子が子の福祉にかなった生活ができたかどうか、それは推して知るべしというところです。もうすぐ大人になろうとしているこの子には何とか幸せになって欲しいと思います。
さて、名前を一字変えた青年の人生はそれから順風満帆でした。無事に博士号を取得し、職につき、よき妻と出会い家庭を築き、妻に黙って仕事を辞め、司法試験を受験し…
しかし、運命はまた青年に試練を与えます。
合否を決めるのは運ではないと標榜する司法試験管理委員会は戸籍名での受験しか認めません。青年は、今度は必死で勉強しました。
現在本名で仕事をがんばっています。
元青年、
部下に恵まれる画数に変えたいそうです(⊙◞౪◟⊙)
な~に~お~!(◞≼థ≽◟◞౪◟◞≼థ≽◟)
平成25年12月4日 文責 弁護士 菊谷淳子