ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

Shall We Dance?

 高校3年次の体育の授業は社交ダンス。2コマぶっちぎりでひたすら踊るというそれはハードなものでした。ワルツ、ジルバ、タンゴ、マンボ。今でこそ無念の勤労生活ですが、当事は社交界デビューそして左うちわの有閑マダムへの野望に燃え、一生懸命練習しました。 が、悲しいかな生きていくのもやっとの致命的な運動音痴のため、思うように手足が動かず、追試に指定されてしまいました。 追試まであと1週間。ワルツだけどうしても足がもつれます。やはり一人で踊ってもしょうがないのです。で、友人の中で一番運動神経の良いHに頼んで一緒に練習してもらいました。 Hは体育はテニス選択、ダンスは知りません。しかし、天性の運動神経と野生の勘、飲み込みが早く、完璧にリードしてくれました。  さて、複数の加害者が共同して被害者に損害を負わせた場合、すなわち共同不法行為は損害の公平な分担という趣旨から、誰に対しても全額請求でき、全額の損害賠償を受ければ誰にも請求できなくなります。つまり、誰に請求するか、全員にか、1人に集中的にするかを選べるわけです。  共同不法行為で1番おなじみなのは不貞行為ですが、配偶者には当然慰謝料が請求できますが、その相手にまで請求できるか否かについては実は争いがあります。なぜなら本来貞操義務というのは結婚している当事者間での義務でしかないからです。  日本の裁判所は不貞相手への損害賠償請求を認めていますが、他方で「・・・・場合でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである」(東京高判昭60.11.20)と考えているのはこのためです。  女性の心情的には、「あの女からとりたい」というのは尤もな気持ちだと思います。ですが、例えば夫の不貞により離婚に至った妻が夫の不貞相手に慰謝料を請求するには、夫から十分な慰謝料を受け取っていないことが前提です。主たる責任は配偶者ですし、不真正連帯債務ですから。(ただし、相手の女性が不貞以外に嫌がらせをしてきたような場合にはもはや不貞行為を超えた一般の不法行為が成立しますから、その時は別途。)   ところで追試で私は体育教師から予期せぬ絶賛を受けました。ワルツを超えた独創的な踊りを披露したからです。ワルツを知らない堀と致命的な運動音痴の私が共同開発した前衛的で画期的なステップ。軽やかに踊りましたよ。   通りかかった外人教師のこういう声援が聞こえるまでは・・・・    Kikutani! ガンバレ!オ盆Dance!   平成24年6月11日 文責 弁護士 菊谷淳子