ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

これでいいのだ

  わがボスは本をこよなく愛し、いろんな本を読みます。賢い本もそうでない本も、賢そうに見える本もそうでない本も。私もボスのおかげで沢山本を読みますが、ボスに勧められるはどちらかというとタイトルを見せるだけで自慢できそうな本・・・・・ではなく、タイトルを隠して読・・・・(以下自主規制)  赤塚富士夫のギャグマンガもボスの影響で読むようになったものの一つです。  さて、旧司法試験で私が司法研修所に入った2008年、そろそろ就職難が言われはじめていました。前期修習が始まってほどなく、当時の日弁連会長鹿児島 隣さん(仮名)が来訪され、300人ほどの修習生を前にこのような話をしました。  「君たち、就職難といわれているようだが、何も心配しなくてよろしい。君たちは研修所を出たら資格がもらえるのだから、独立すればいいのだ僕はこれからゴルフがあるので早く帰らないといけないのだが。ごほっ。とりあえずみなさんに言いたいことは、すぐに独立できるのだから 何も心配しなくてよろしい。 ・・・・じゃあ、ボクはこれで失礼する福島でこれからゴルフがあるので。」 こうやって文字にするとバカボンのパパのセリフのようですが、これ、実話です。 本当にこのままのお言葉 吐き捨て 残され憧れの日弁連会長は退出されました。  弁護士資格を取得することと、適切迅速に事件を処理できることは違います。教科書や条文にはない問題もありますし、経験で判断し経験でうまく解決する部分もあります。これらの経験を先輩弁護士の仕事を手伝いながら覚えていき、また次に伝えていく、ことで弁護士の質を保ってきました。  裁判所は裁判官が単独事件を持つまでおよそ5年かけます。外科医だって一人で最初から一人で手術を行うわけではありません。みんなOJTです。  これまでの弁護士の質も決して十分ではなかったかもしれません。しかしその最低限の質さえも今後は保障されなくなる、これが新人の就職難の問題の見過ごすことのできない本質です。(これとは逆に、採用したくても人材難で…というもうひとつの深刻な問題についてはまた後日改めて書きたいと思います。)  無造作な量産による弁護士の質の確保の困難、これを弁護士の総本山がこれでいいのだと後押しすることは摩訶不思議です。 ところで、私はテレビがない家で育ったのでつい最近まで「ドリフターズ」というのはプロレスの必殺技だと思っていました。こういうの、ドリフのコントにならないかしら。マンガにするとちょっと笑えないので。      平成24年5月26日 文責 弁護士 菊谷淳子