真実の行方
司法試験受験生だった今は昔、中川とよく映画を観に行きました。
二人とも、司法試験という暗黒のトンネルの中を歩いている頃でしたから、スカッとする映画とか現実を忘れられそうな映画とか、そういうのを観てラーメンすすって帰る、というのが月に一度の楽しみでした。
あるとき映画の中で、悪役が「私にかけた呪いを解きなさいよ」と詰め寄る主人公にこう言い放つシーンがありました。
「私は呪いはかけることができるけど、解き方は知らないのよね、おほほほほほ」
中川はこれを聞いて一日中憤慨していました。(╬ಠ益ಠ)
菊谷はいつかすごく嫌なやつに応用して使ってやろうとほくそえんでいました。(ლ ^ิ౪^ิ)
先日裁判官出身の法務省幹部が女子トイレの盗撮で逮捕されました。
裁判官出身、というキーワードで色めき立つ業界、
仙台、東京への異動歴、50歳代、というたったこれだけの情報で、早速ある弁護士のブログに、この方の本名、異動歴などが公表されていました。(現在は名前も公表されています)
誠に恐ろしい業界です。
私などには関係のないお方、と思っておりましたら、ふと目についたのはこの異動歴
H14.4.1~H17.3.31 東京地裁
東京地裁の女子トイレで盗撮カメラが見つかって、当時修習生だった男性が逮捕されたという事件が平成17年の1月ころにありました。
彼は実名で報道されていました。
まさかあの事件は…( ´^ิ益^ิ`)
思わず、その事件どうなったかネットで調べてみますと驚くべき事がわかりました。
なんとその男性修習生は犯行時刻にはっきりしたアリバイがあり、誤認逮捕だったのです。もちろん不起訴。その後、司法修習を終え、弁護士をされています。
私は今回捕まった人がアレでないかということをここで言うつもりはありません、たまたまでしょう。たぶん。
私が非常に問題だと思うのは、盗撮容疑で逮捕された修習生が、実名で報道されたのにも拘わらず、逮捕された時だけ大々的に報道され、一番大事なその後が報道されていなかったことです。
自由には自ずと一定の自制なり責任が伴います。報道には、間違った事実を報道したのなら、その続きをきちんと報道する義務があるのでは、と思うのは私だけでしょうか。
表現の自由(憲法21条)というのは、本利は国政のあり方を国民自らが決めるためには国政についての意見や世の中の事実を広く知らしめ、国民に判断材料を与えるためです。しかし自由には責任があります。
知らしめてしまった事実については、責任があるのではないでしょうか。
個人への打撃ということで言えば、トイレの盗撮容疑をかけられることというのはその性癖の特殊性もあって痴漢の容疑で逮捕されたと報道されるよりはるかに取り返しがつかないことと私は思います。
えん罪そのものより恐ろしい結果を残したままでいいのでしょうか。
さて、個人的な話で恐縮ですが、
この方の異動歴には
H20.4.1~H22.3.31 東京地裁判事 簡裁判事
というのもございまして、
私もそのころ、東京地裁で修習していました。ええ、たまたまです。
ちなみに、私は我が国の刑事司法制度に期待しておりませんので、モットーは
主文 被告人は私刑
です。
平成26年5月27日 文責 弁護士 菊谷淳子