ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

いまわの相談

 昨年8月、重い腰をあげて入院し、ちょっと手術をしました。  いよいよ手術さてこれから手術台に上り、麻酔・・・・という段になって神戸から来た母が執刀医にごあいさつ。「よろしくお願いします。ところで、あの、もしものときですけど神戸までもってかえれますでしょうか」 あのう、今なんて?  耳を疑っていると今度は枕元からふってくるお言葉  「遺体は航空機ではこべる?バスかロッカーとかには「次のものは入れないでください ・・・死体、・・・」とか書いてあるやん。麻酔効く前に回答しといて」  最後の法律相談が「航空機で(自分の)遺体を運べるか」  身内の法律相談はたいていむちゃぶりですから。  ああ、もうこんなときに。あの、逝ってきます。  さて、法律相談は、時々予期しない相談が来ることがあります。相談者としては、弁護士=法律に明るい人、と思っているので、法律的なことはすべてお答えできることだと思っています。それはまあしょうがないと思います。が、知らない法律だってあります。これまで全く考えたこともないような場面だってあります。その時は調べないとわかりません。  ただ、調べてお答えするにせよ、解釈の余地があるものや、類推の可能性、本件の特殊性などの検討等はやはり専門家ですからやります。その際基本原則は知っているという点では単にネットで調べるというのとは違います。  その相談が一人歩きしないようにすることも大切です。  相談者にとって法律相談のハードルは結構高いので、自分の回答が唯一の回答になる可能性が高いのです。そうすると責任は重大。やはりきちんと調べないと。  もちろん、目指すところは、どのような相談でも、自信満々にぱしっぱしっと答えるようになることですが、自分を過信したり、見栄を張ったりすることは相談者のためにはなりません。  きちんと調べて回答することは何ら恥ずかしいことではないのです。    ところで、自分では覚えていませんが、執刀医によると次のように冷静に回答し、そして眠ったそうです。 「シャケと同じで・・・クール宅急便生モノ・天地無用で・・・」 平成24年5月25日 文責 弁護士 菊谷淳子