ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

御元気ですか

  その事件はとてもとても難しい、ややこしい事件だったのですが、裁判官が両代理人を黙らせ、訴訟指揮は私が行いますと断言し、ブルドーザーのように進めていきました。目つきは三角形で、それはそれはいかつい感じの、そしてとても優秀な  おそろしい女性裁判官でした。  ところが、途中からペースがダウンし、終結後、判決期日が3回延期になりました。  最後に、明後日転任しますが判決が書けませんでした。ごめんなさい、というお電話がかかってきました。  書こうと思えば楽な判決がかけた事件なのに、  めんどくさいところは端折ってかける事件なのに、  そうでなくても、えげつない数の事件を抱え、時間がいくらあっても足りないのに、  ご自身にも仕事どころではないような御事情があったのに  一生懸命考え、ものすごく悩まれてのことだったと思います。 一人ひとりの裁判官が抱える事件数はものすごい量です。しかも事件が難しいかどうかはさておき、どれだけ仕事をこなしたかが評価になりますから、本当は早く片付けたかったと思います。  弁護士と違って裁判官は自分がどんなに悩んで、一番よいと思う判決を書いても、当事者からありがとうと直接言われることはありません。一生懸命仕事をしても直接感謝してもらえる機会は多分ないのです。それどころか時には負けたほうからは罵られ、アレな当事者だと裁判所の前で名前を連呼されることすらあります。  でも本当は、当事者それぞれの主張に目を止め、きちんと理由をつけて判断し、一生懸命考えてくださったのだなあ、とわかる判決には、期日が伸びても、たとえ負けたとしても納得できます。依頼者にも説明できます。それに心から感謝します。  ○月●日 14:00 ブル  ・・・・っていうボスの手帳の記載は 気のせいです  西国の地で、また、ブルドーザーに戻っていらっしゃるといいなあと思っています。  そして、どうか、これからも一生懸命判決を書いてください。 私もいつかまたお目にかかりたいと思っています。ありがとうございました。     平成24年11月7日 文責 弁護士 菊谷淳子