ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

究極のコース選択

 東京都弁護士協同組合提携の某結婚紹介所はとても面白いコース設定をしています。 

 紹介されるお相手について  ①弁護士に限定する  ②弁護士以外に限定する を選んで入会するのです。ちなみにお値段は同じです。

 

さて、今日は究極の選択のお話です。 夏の夜、ヨッパライには危険が一杯です。スリ、昏睡強盗、オヤジ狩り。皆様は街で出会う恐ろしいことと言いますとどんなことが頭をよぎりますか。 私の一押しは痴漢と間違えられること、です。

 たいていの方は被害者になることばかり想定されます、しかし本当に怖いのは加害者に「される」ことの方です。

 一般的な痴漢事件のフルコースをご説明しますと、大体このような感じです。 駅長室に連れて行かれ、そのあと警察到着。そして現行犯逮捕 この現行犯逮捕が曲者です。一旦現行犯逮捕されればその後①事実を認めて示談交渉に入るか、②事実を争って23日間勾留コースか、のどちらかのコースをたどります。 無実だった場合、①は心情的に難しい。示談金相場は下手をすると数十万、無実なのに謝罪して払う気になるもんですか。しかし、①の場合は早期に自宅に戻れますし、示談すれば大体は不起訴ですから前科がつきません。 これに対し、②の事実を争うコースになるとどうなるか。もれなく約20日間の留置場生活が始まります。一般的な会社員ではまず20日間も理由を言わずに休むことはできません。 しかも、容疑が容疑。

 日頃真面目だから、なんて方はかえって・・・と疑われ始末の悪い事態に陥ります。風呂は週2回、連日の長時間の取調、やってなくてもしゃべりたくなってしまいます。  個人的な心情としては、家族や職場の応援があって、環境が許す限りで、無実なら争いましょう。そのために手を尽くします、がんばって闘いましょう、と言いたい。しかし依頼者の生活はもっと大事です。

 弁護士が正義を振り翳し、依頼者の生活を破綻させてはどうしようもない、弁護士にとっても究極の選択でのジレンマです。 一旦自白して、裁判で供述を翻す、という方法をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし自白調書は、非常に重い証拠です。ですから、弁護士としてはおすすめできないのです。 人質司法、と呼ばれているところの弊害ですが、検察官には、被疑者にも生活があるということをもっと分かって欲しい、と思います。

 

 さて、上記紹介所の究極の選択肢、私なら迷わず・・・と言いたいところですが、うちの事務所でなぜか私にだけパンフが届きません。

 しかたがないので誕生日に送られてきた 「墓園のご案内ლ(◉◞౪◟◉ )ლ」 を眺めつつ、早稲田がいいか(΄◞ิ౪◟ิ‵ )、六本木がいいか(΄◞ิ౪◟ิ‵ )悩んでいるこの頃です。        平成27年8月17日 文責 弁護士 菊谷淳子