ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

とおい国のおとぎ話②

シンデレラが完全黙秘を続けている中、国内では大変な騒ぎになっていました。自宅警備員の女がどうやらサッカー中継見たさに王子様に靴を投げつけて殺す。舞踏会に招かれなかった非リア充たちからうらやまけしからんから処刑せよ。という声が多く上がりました。報道も過熱し、ネットでも殺害予告がされはじめました。 当番弁護のソツモト弁護士が来ました。シンデレラはお金がないのでソツモト弁護士に依頼することにしました。国選です。ソツモト弁護士はシンデレラの話を一応聞いてくれました。 「ガラスの靴は私が投げたのではありません。魔法の靴なので勝手に羽が生えて王子様の頭に向かっていきました。,私はそのまま立ち去っただけです。私はやっていません。」 ソツモト弁護士はそんな話だれが信じるかいと最初から思いました。そしてこう言いました。 困るんですよね~国中の人が注目してるんですよ。ガラスの靴事件って。 そういう不合理な弁解をしていると反省していないと評価され、不利になりますよ。 いいですか、ただのガラスの靴に羽がはえるわけないんです。そんな話誰が信じるんですか。さっさと認めて謝ったらどうですか。 あ、最近ね、国民の耳目を集める著名事件については弁護人は国民による様々な批判を受けることはやむを得ない、ってそういう判決がでてるんですよね(最判平成23年7月15日)様々な批判っていうのは不当な批判であろうがなんだろうが甘受しなさいよ、ってことで、そういう批判を受けたくなければ国民感情に配慮して弁護しなさい、ていう話なんですね。批判ってても懲戒請求アリですからね。いや~私たち弁護士にとっては何より怖いんですよ。裁判所がそういうからねえ~。僕は検証する気にもなりませんねえ。まあ、情状を争うってことで、いいっしょ。僕、あなたの不合理な弁解を法廷で述べて懲戒請求されたくないもん シンデレラはびっくりしました。弁護人は被告人の権利を守るのではないか、そりゃあ私の方もちょっとは不合理かもしれないけれど、国民感情と被告人の私とどっちが大事よ ソツモト弁護士は言いました        国民感情に決まってます。 前は被告人のための弁護との間でずいぶん迷ったこともあったけど、今はもう迷わなくていいんです。わかりやすいじゃん。人を殺しておいて不合理な弁解なんかするなんて、やっぱダメっしょ。日弁連も判決に文句言ってないし。  平成24年6月27日 文責 弁護士 菊谷淳子      そのころ、隣村でまた事件が起きます。