ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

最期の証明②

実は日本での変死体の司法解剖の割合はわずか9パーセント。91パーセントの変死体は解剖もされません。先進国では最低打率です。

しかし、東京、大阪など大都市ならまだいい方です。

司法解剖にはそれなりの規模の設備が必要です。また、監察医制度を設けている地域はまだ日本で東京23区、大阪、神戸、名古屋、横浜だけです。地域格差があるのです。

近年、このような勘と経験に事件性の判断を頼るのではなく、もっと合理的に解剖すべき事案を選別し、埋もれる事件をなくそうとする画期的な考え方があります。

その画期的な制度とはAi(死亡時画像病理診断)というものです。司法解剖前にCTやMRIによるスクリーニングをし、事件性の判断を簡易に、そして大量に行い、客観的根拠を元に解剖の選別をするという考え方です。

この制度なら、客観的根拠に基づいて本当に解剖が必要な変死の捜査にしぼることができますから、埋もれる事件も減らせます。

私だって、解剖されなくて済みます。

また検視官や監察医のいない、地方都市ならもっと埋もれた事件もあるかもしれません。そういった埋もれた事件を無くし、かつ捜査の都市格差をなくすためには、とてもいい制度だと思います。

しかし、意外なことにこの制度はコスト面で反対されていますし、伝統的な司法解剖を支持する一部の解剖学者からも反対され広い実現にはいたっていません。

埋もれてしまった無念の死がないようにできるのなら、方法論にあえてこだわることはないのにな、とは私見ですが。

解剖されて無念の死後になってしまわないよう、明日は鬼殺しではなく賀茂鶴いい気分(温泉)

   文責 弁護士 菊谷淳子