恐ろしいものは色々ありますが、私は高いところが苦手です。特に、歩道橋。
脳細胞をフル回転してできるかぎりの迂回路を探し、それでも無理であれば地上との今生の別れを惜しみながら、人の5倍ほどの時間をかけて、おそるおそる渡ります。
走馬灯が容赦なくびゅんびゅん回ります。
辿り着いた時は、生還の喜びをかみしめます。
で、ある日、お当番が回ってきました。当番弁護といって身体を拘束されている被疑者または被告人に一回だけ、無料で法律相談をする当番のことです。
警察署の名前を聞くときのまず最初の関心事は、「遠いかどうか」です。なぜなら当番弁護ではそのまま国選なり私選なりで受任することが多く、通うことが予想されるからです。交通の便はとても大事なのです。
その日は駅からは近い警察署でした。
しかしその警察署は駅にとても近かったのですが、そこへたどりつく道は歩道橋だけでした。聞いておけばよかった。
すぐそこに見えるのに、見えるのに。
見渡せども見渡せども迂回路は見当たりません。
目が回ります。
楽しい人生でした。
と、その時、後ろから人が来るのが見えました。
前には進まなければなりません。
恥を忍んで「すみません、つかまらせてください」と声をかけようか・・・
宗教の勧誘と思われないだろうか・・・・
しかし、そのときあることに気づきました (続きます)
1月12日 文責 弁護士 菊谷 淳子