静かで暖かいクリスマス
本当にどんぞこの状態になった時、人はどうすれば救われるのか、その答えだというあるお話があります。 私も正直、最初は意味がわかりませんでした。思い出すようになったのはごく最近です。
年老いた靴屋のマルチンは幼い息子のピーターと二人暮らし。最愛の妻はとうに亡くなっていて、貧しいながらもピーターと二人、幸せにくらしていました。
ところが、ピーターが突然、病気で亡くなってしまいます。 マルチンは絶望して自宅に引きこもり、酒浸りの日々を過ごします。 友人たちは心配します。マルチン、そんなことをしてもピーターが悲しむだけだ、と言うのですが、悲しみは理屈じゃありませんので。
クリスマス、マルチンが自宅にこもっていますと、 雪かきのおじいさんが疲れ切ってしゃがみこんでいるのが見えました。 マルチンはおじいさんを家に招き入れ、暖かいお茶をだしてあげました。
おじいさんは、しばらく体を温め、喜んで帰って行きました。
しばらくすると赤ん坊を抱えた貧しい女性が行き倒れになりそうになっているのを見ました。 マルチンは女性と赤ん坊を招き入れ赤ちゃんに暖かいミルクを、息子のあかちゃんの時の服を女性に持たせました。女性は喜んで帰っていきました。
次にマルチンは、おばあさんが「リンゴ泥棒!」と叫ぶのを聞きました。貧しい少年が空腹からリンゴを盗んでしまったのです。マルチンは、お金をおばあさんに払い、少年には「私が代わりにお金をはらってあげよう、でもこれからは人のものを盗んではいけないよ」とさとしました。少年は「どうもありがとう、これからはもうしません。おばあさんごめんなさい」とお礼とお詫びを言って帰りました。
マルチンは、自分にも人に喜んでもらえることがある、と思い、少し、心があったたかく、幸せな気持ちになりました。
私はごく最近になって、ほんの少しだけ、それがなぜなのかわかるような気がしてきました。 法律上のトラブルを抱える方には、本当に深い孤独を味わっている人もたくさんおられます。 でもほんの少し、自分以外の人に思いやりを向けられたら、心が少し温かくなって、少なくとも闇のような深い孤独とはおさらばできるかもしれません。
滅多に人様に親切にしたことのない私ですが、たまには人に思いやりをもって接してみたいと思います。
では、みなさま、メリークリスマス。
平成27年12月25日 文責 弁護士 菊谷淳子