ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

泥棒が失うもの

雨の降る日曜日、しばらくぶりに碁盤を取りだしたところびっくりしました。 黒い碁石が明らかに半減しています。 はるさんは訳あってお留守なので、私の家にいるのは、私とモフさん猫と、そして数量不明のゴキブリだけです そしてゴキブリは碁石なんか興味ありません。 食べたの、モフさん? あわててまた獣医さんに走りました。ダッシュ(走り出すさま)ダッシュ(走り出すさま)ダッシュ(走り出すさま)ダッシュ(走り出すさま) ところで、刑事裁判で一番大切なことは被告人自身の反省なのですが、 反省の前提には罪の意識が必要です。 しかし、罪の意識がどうしても薄くなってしまう犯罪があります。 窃盗犯薬物犯です。 薬物犯は被害者がいません。また通常の泥棒の場合被害者と直接接しません。 そしていずれの場合も、自分は誰も傷つけていないから、人を殴ったり、傷つけたり、死に至らしめてしまったりするような人よりは大したことない、というように考えがちで、罪の意識が薄くなってしまうのです。 でも、犯罪を繰り返さないように、気付いてほしいなと思うことがあります。 実は、犯罪の重さと犯人が失うものの重さはあまり関係がありません。 窃盗犯も薬物犯も、その犯罪の性質から、その本人自身が大切なものを失っているのです。 死刑の言い渡しを受ける場合以外、皆いずれは社会に戻らなければなりません。 窃盗犯や薬物犯はたとえば殺人犯よりは一般に短い刑で社会に戻ってきます。 しかし、出所してこれから働こうとするとき、窃盗の前科のある方が、傷害前科を繰り返している人よりも採用されにくいことは明らかです。 また、何らかの事情で殺人を犯した人物より、薬物で刑務所に入った人の方が家族から受け入れられにくくなることも確かです。 それは、彼らが「信用」という大切なものを失っているからなのです。 信用を損なう力は、むしろ、一般の粗暴犯より窃盗犯や薬物犯のほうが大きいのではないかと思います。 社会から疎外され、孤立することはどんな人間でも恐れることです。 罪の意識の薄さはしょうがないとしても、せめて、信用を失うことの重大さを分かってほしい、自分の人生をもう少し大切にしてほしい、そして二度と繰り返さないでほしいと願っています。 ところで、獣医さんでレントゲンを撮ってもらったところ、 モフさんのおなかからは碁石はでてきませんでした。 うなだれているモフさんを抱え、ごめんね、ごめんね、疑ってごめんね、と繰り返しながら自宅に戻りました。 モフさん、帰宅するとまっすぐ、例のタオルに。 私も、安心して就寝・・・・ まてよ 枕の下がごとごとします。 探ってみると枕の下からなんかごそごそ黒い物が・・・ ・・・・どうやら私は、明日をも知れぬモフさんにまで、心配されているようです・・・たぶん、モフさん、ゴキブリを獲ったつもりで・・・・    平成24年10月30日 文責 弁護士 菊谷淳子