執念のタオル
突然うちに転がり込んできたロシアンブルーのモフさんは、菊谷宅最高の陽だまりで毎日寝てばかりいます。
獣医さんに診せたのですが、カタカナのいっぱい付く難しい病気で、「もっても1週間かな」・・・・とのことでした。
しょうがないなあ、まあ、うちで死んでもいいよ、モフさん。
・・・・とはいうものの、毎日「生きててね」と祈る気持ちで家を出、
帰ってきて生きていることを確認しほっとしていました。
そんな毎日でしたが、ついに、
ついに、
2週間過ぎましたよ、モフさん。
モフさんは、ある日私の大事な愛用タオルケットの上にどっかり座って動かなくなりました。
そのタオル、すごくすごく気に入っていて、それをかぶって寝ないと眠れないのです、私が。
モフさん、タオル返してよ
新しいタオルあげるから・・・・
モフさん、ちょっとそこどいて・・・・
しょうがない、実力行使に・・・・
老女だろうが、瀕死だろうが、猫だろうが、関係ありません。
私はそのタオル、要るのです。
ところで、借りている家の鍵を夫が外出した際妻が勝手に変え、夫が入れないようにした場合、夫はどのような方法で自宅に入ることができるでしょうか。
何が何でも所有権者でないと何も言えないということはありません。
そこで、出てくるのが占有回収の訴え(民法200条)です。
占有権というのは事実上その物を支配する権利(民法180条以下)のことで、この占有権にもそれなりの権利が認められています。夫は自分にも占有させろ、つまり、家に入れるようにしろということは占有権に基づいてできるのです。※
ただし、家から追い出されてから1年以内に請求しないといけません
もっともこの場合妻も占有者であることは変わりありませんから、共同占有することになります。元のように暮らすことは到底無理ではないかと思うのですが・・・・
※ すでに別居していて鍵を変えられた場合には当てはまりません
別居している場合には住居侵入罪すら成立しうるので要注意です
さて、近所に住む、学生時代のルームメイトに電話で相談。
彼女は、前にこのタオルを「こんな怨念のこもったタオルは捨てたほうがいいい」と捨てようとしたことがあります。
で彼女いわく、一任しろと。
その猫死んだら、一緒に火葬するわ、そのタオル
(;゚Д゚)
平成24年10月25日 文責 弁護士 菊谷淳子