ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

一筆啓上 父上様

お元気ですか。

 なかなか帰ることができなくてすみません。

 ジム通いも順調そうですね。

 今の仕事についてから、当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったとやっと気づきました。

 お父さんとお母さんが仲良くしていること、子供たちには惜しみなく愛情を注いでくださったこと、贅沢をちっともしないで子供の教育に徹底して下さったこと、本当に感謝しています。

 私が9歳のころですが、質素倹約を旨とする我が一家が、寝台列車に乗ってディズニーランドへ行くと聞いた時には、本当に驚きました。てっきり会社で何かあったのかと勘繰り、「最後の旅行」じゃないかと勝手に脅え、ディズニーランドでは体力を極力使わないように下を向いて省エネモードにこれ努め、「最後のお写真」にならないよう、写真からも逃げ回りました。どんなにお父さんとお母さんが大好きでも、お供は勘弁つかまつる。

 新宿の京王プラザホテルでは、お父さんとお母さんが寝静まるのを待ってから眠りました。

 ・・・心配しましたが、ご結婚10周年の記念旅行だったのですね・・・・

 9歳の時分から思っていたことですが、どんなに互いを思いやっていたとしても、親と子の人生は別のものです。子の生命が親によって絶たれることも、子の身体の安全が親によって危険にさらされることも決して許されないと私は信じています。虐待ならなおのことです。

 最近の裁判員裁判では、虐待事件で量刑が殊更に軽くなっているような危惧を感じます。先日の大阪の事件は懲役30年ですが、それは殺人罪として起訴していたからにすぎません。たいていの場合虐待の果てに死なせた場合、殺意自体は否定されるので逮捕監禁致死とか保護責任者遺棄致死、といった殺人罪ではない罪名で裁かれ、その量刑相場で判断されているようです。なぜ殺意がないからと言うだけの理由で、あかの他人を殺すときより自分の子供を殺すときのほうが量刑が軽くなるのか、私には全くわかりません。法定刑の上限いっぱいの範囲で真に妥当な刑罰を科せばいいのに。

 ともあれ、私はお父さんとお母さんに大切に育てて頂いたこと、とても感謝しています。

 お誕生日、おめでとうございます。体大事にして下さい。

平成24年3月19日 淳子