朝8時ころ、お掃除ロボットのスイッチを入れ、ぴしゃぴしゃと額をたたき起こしてくれ、時々「朝食」(にはしてません絶対に)の瀕死のすずめを枕元に運び、帰宅すると気分次第でマッサージをしてくれる・・・・・自称家政婦のはるさん。
はるさんは岐阜県大垣市で勝手に鞄のなかに押し入りそのままついてきて住み着いた中年の元のらねこです。
私が不慮の、いや風呂の事故とかで死んだ場合はどうするのだろう、はるさん。
さて、遺言は民法に規定された制度ですが、民法上、権利能力の主体は人に限られていますから、たとえネコしか「家族」がいないとしてもネコは財産を相続できません。従って、ネコに残すという遺言は無効。
民法の規定通りに法定相続人によって遺産は分けられます。
ただ、ネコに相続させてもネコがお金を使うことができるはずはありませんし、飼い主としてもネコに相続させたいというのはネコの余生を全うさせたい、というところに本意があるはずです。
そうした場合には、遺言でネコの次のもらい手(信頼できる人物でないといけませんね)を指定し、その人にネコの世話をすることを条件にいくらか差し上げるのです。これを「負担付遺贈」と言います。 あくまで財産を譲り受けるのは人ですから、遺言は無効になりません。
ただ、遺贈は単独行為ですから、指定されたお相手が受けてくれないという事態にもなりまねません。そこで次のもらい手さんと死因贈与契約を締結する方が確実です。
アディオス、法定相続人達。
ところで、獣医さんから聞いたところ、猫が「朝食」を持ってきてくれるのは、「餌の取り方を教えている」つもりなんだそうです。
思い返せば、ゴキブリを仕留め損なった時、視線を感じて振り返るとはるさんがなんともがっかりした顔をしていました。むしろはるさんに遺言を書いて欲しいのは私のほうです。
平成24年2月28日 文責 弁護士 菊谷淳子