ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

立つ鳥後始末残さじ②

 家主からの過大な請求の中には、例えば、修繕費については部屋の改装費も関係ない部分まで改装している(お風呂で死亡しているにも拘わらずキッチンをシステムキッチンに改装する費用まで請求している)といった場合、アパート1棟丸ごと建て替える費用1億2000万円を請求したといった事案があります。

 本来、原状回復義務ですから、そこまでの改装費は負担する必要はありません。

 

 また、家賃補償についても期間をどれくらいにするか、その部屋だけに限定せず同じアパートの別の部屋にも借りてがつかないことまで補償内容となるか、で金額が大きく異なります。家主の多くはローンを抱えているわけですから、死活問題です。

 しかし裁判では個々の事案の事情を考慮し、相続人、あるいは連帯保証人にどこまで負担させるかという問題は、損害の公平な分担という観点から判断されます。

 一例として家賃減収の補償期間を3年、あくまで当該部屋に告知義務を限定し、他の部屋の減収までは損害として認めなかった裁判例があります(東京地方裁判所平成19年8月10日判決)。

 ただ、裁判例はあくまで個別の事情をもとにしたものですから。個別の事情如何によっては結論がもう少し借主側に重いものもあるのではないかと思います。ただ、まるまる1棟の建て替えまではみとめられることはないと思いますが。いずれにせよ、こういった請求は少なからぬ金額のものですから、専門家に相談することが必要だと思います。

 

 以上に述べたのはあくまで自死の事案ですから、病死、事故死の場合はあてはまりません。しかし、その場合でも原状回復義務は発生しますから、原状回復が簡単かどうか、すなわち死後何日で、見つかるかが重要になります。

 ・・・・さて、今日のお風呂はおとなしくノンアルコールで・・・・・

平成24年2月21日 文責 弁護士 菊谷淳子