黄金輝く国から⑤ きのどくな神様
アンデスの福の神、エケコ
山高帽を被った両手を広げ口を明けて立っているおっさんの人形です。
この人形の首に自分の欲しい物のミニチュアをぶらさげ、決まった日にたばこをお供えすると願いごとをかなえてくれるそうです。ぶら下げるミニチュアは,穀物の入った袋だったり、車や電化製品などもあります。お金もぶらさげます。どの人形もそれはそれはいっぱい荷物をかかえています。
顔は明るいのに、欲望という重い荷物を一心に背負うエケコはどことなく気の毒な感じがします。
朝の市場
さて、荷物のお話です。借家人が荷物を置きっぱなしにしたまま家賃も支払わず居なくなった場合、大家さんはその荷物を処分ことはできるのでしょうか。あらかじめ賃貸借契約書にそういう条項を入れている場合でも処分はできないのでしょうか。
実は、契約書に「遺留物は大家が処分できる」という条項が入っている場合でも「やむを得ない場合」でないと大家さんは荷物を勝手に処分することはできません。(浦和(現さいたま)地方裁判所、平成6年4月22日判決、判例タイムズ874-231)
裁判を起こし、確定判決を得て、明け渡しの強制執行をする、そういう法律上の手続きがあるので、自力救済は真にやむをえない場合しかできないのです。もっともこういう手続きにはそれなりに時間がかかります。それでも、自力で明け渡しを求めるのはだめだ、というのが裁判所の考え方です。
ですから借家人からあとで大家さんが損害賠償を請求されると一部は認められる場合があります。もっとも荷物を放り出して家賃も払わず出て行った借家人にも過失がありますから過失相殺はされます。
ただし、借家人が放置していった荷物が生もので腐る、といった事情があれば「社会的相当行為」として処分も認められる余地はあります。
当事者が契約で定めていても、司法の手を借りず自分で権利を守る(自力救済といいます)ことには裁判所は厳しいのです。
さて、エケコはものすごく御利益があるそうです。ガイドさんは力説していました。確かに札束を首にかけているおっさん達は黒いお金もかまわずかき集めてくれそうな気がします。
いつも、神様関係は買うなと忠告してくれる中川でさえ、熱心に眺めていたくらいです(΄◞ิ౪◟ิ‵ )
でも、札束を首からブラさげくちにたばこをくわえ薄ら笑いを浮かべてている小さくとも存在感絶大なおっさんの人形が部屋にあったら、幸運を呼ぶどころかなけなしのご縁もふっとばされそうです(΄◞ิ౪◟ิ‵ )。
よるの街なみ
男と神様は旅先から持ち帰らないのが一番です。
平成26年2月18日 文責 弁護士 菊谷淳子