ばちあたりな骨董品店
京都は八坂神社のほど近くに、その古びた骨董品店はありました。
そこでは古い家具の外に、古いひな人形を売っていました。
バラで(΄◞ิ౪◟ิ‵ )
縁起やしきたりを気にする京の町のもう一つの顔は、よそものには適当です。
三人官女や、五人囃子はセットで買っていく外国人もいたようですが、ずっと売れ残っていた男雛がいました。いつ見ても、ずっとそのままでした。
年々汚れてすさんでいくその姿は見るに忍びないものがありました。
さびしかろうと思って、同じく売れ残りの高砂人形の翁と媼をそっと両脇に並べてみましたが、そうしますと、
ひきこもりでアル中で失業中の息子を抱えて途方に暮れている老いた両親(・´ω`・)( ≖ิൠ≖ิ )(・´ω`・)
のような図になり、親切が裏目に出てしまったことを思い出します。
さて、法律相談というのは個別具体的でないと意味がないのであまり一般論として、という話はしないのですが、まあ、これは一般論として言えるかなと思うことがあります。
妻から離婚を切り出された場合、元に戻ることは可能でしょうか、という質問です。はっきり言えます。
ありません。
同居を求めたり、円満調停を起こしても、妻が夫に嫌気がさしていればどうしようもありません。
家庭裁判所の審理するポイントは「破綻していたか」です。ですから、無理に同居を求める調停なんか起こしてしまうと帰って地雷を踏むことがあります。
こういう場合、なぜか妻に直接連絡をとろうとする夫が多いのですが、無理に直接連絡をとろうとすればさらに地雷を踏みます。子供や両親を通じて執拗に連絡をとろうとしても同じです。
妻が連絡を拒絶しているのは代理人弁護士や妻の親族のせいではありません。そう思いたいのでしょうが単に不可逆的に嫌われているのです。
妻が離婚を切り出したとき、すでに彼女は扉の向こうの別の世界にいるのです。
私どもは妻側だけでなく、夫側から相談を受けることもあります。
もちろん、別れを切り出された方はどれだけ自分に非があっても心の痛みを感じないわけはないし、聞いている方も心が痛む相談もあります。
私自身の身内や親しい友人から相談されることもあります。
本人をよく知っているだけに心が非常に痛みますが、法律家としての経験からは真実とするべきことをはっきり伝えるしかありません。
復縁はない。
ただ、私はこう思うのです。
心では泣きながらでも黙って妻を送り出す度量のある男性なら、次の幸せがきっときます。
さて、うっとりするような優雅なおひな様をあまり見かけなくなったような気がするこの頃、東京で久しぶりにちょっとはましなお雛様を見ました。
京雛を見慣れた私には、どうもこの並びは不自然に感じますが、仕方がない。
平成26年3月9日 文責 弁護士 菊谷淳子