ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

笑門福来②

受験時代の恩師から教わった名言を思い出します 出力以上のことはしない 今でも肝に銘じています。 それなのに今週は起案ラッシュで、私にしてはめまぐるしく書いています。 うっかり準備書面に、こかげモードで    好きな言葉は人権擁護、しかし座右の銘は一攫千金 なんて、書いてしまいそうな勢いです。 さて,前回の続きです。 マンションの水道料金の支払方法には、各戸が個別に水道局に支払う方法の外、管理組合が一括して水道局に水道料金を支払い、各戸から管理組合が徴収する方法があります。 管理組合が徴収する場合、管理組合が水道局から大口割引の適用を受け、各戸には通常の契約体系の料金でメーターに応じた請求をすることが多いようです。 そしてその場合、管理組合が徴収する水道料金には①純然たる立替部分②大口割引を受ける事で発生した差額という性質の異なる2つの請求権があります。 中古マンションを買った人(法律用語で特定承継人といいます)に対して管理組合が請求できるというためには、区分所有法8条で同法7条1項に該当するかどうかが問題となります。 上記のうち②については通常共有部分のために用いられ、区分所有者全体のために利用されますから、請求は可能です。 しかし①については、専有部分に関する水道を使った人の問題であり、本来は請求はできないはずです(東京地判H5.11.29) では、管理組合の規約に規定があれば、特定承継人にも承継されるのでしょうか。 実は、特定承継人に専有部分の水道料金滞納部分の支払い義務を認めた裁判例(平成20年4月16日大阪高等裁判所判決)がありますが、その場合も規約で無制限に認めているわけではありません。その理由の部分が大事です。 大阪の裁判例のマンションには特定承継人に承継されるという規約があったのですが、実はこの規約の効力について裁判所は「各専有部分の水道料金や電気料金は、専ら専有部分において消費した水道や電気の料金であり、共用部分の管理とは直接関係がなく、区分所有者全体に影響を及ぼすものともいえない事柄であるから、特段の事情のない限り、規約で定めうる債権の範囲に含まれないと解すべきである。」と述べています。  それでもこの大阪の裁判例が管理組合からの請求を認めたのは、このマンションが非常に特殊なマンションで、水道局との戸別契約ができないようなマンションだったため、「特段の事情」があると認めただけです。 つまりどんな規約があり、どんなマンションか、ということが中古マンションの買受人には非常に重要だということです。 DSC_0379.JPG    平成25年1月10日  文責 弁護士 菊谷淳子