おもちゃのマーチ 2 モグラの場合
僕はドイツ生まれ。
ものすごく昔、ルフトハンザの機内販売から当時小学生だったKの父に連れてこられました。
Kは当時、「オズの魔法使い」に夢中でした。
家じゅうのぬいぐるみに変な穴があいているのを見て、
正直僕は恐怖にかられました。
なるべく、Kと目を合わせないように、
Kにかかわらないように、
机や棚の隅っこに隠れ、ひっそりと生きてきました。
オズの魔法使いは、
心臓を欲しがるブリキの樵には、胸にざっくり穴をあけておがくずで作った心臓を
脳みそを欲しがるかかしには、頭をほじくり返して脳みそを、
勇気を欲しがるライオンには、あやしげなお薬を、飲ませ治療を施しますよね、
Kはその部分に夢中でした。
Kはその後 河童に夢中になったので、僕は難を逃れ、
去年からKの職場で電話番しています。
今でもKは時々、医学書読んでます。
Kの職場はこういう物騒な本がたくさんあるので、僕は正直、気が気じゃありません。
ところで、Kがよく調べているのは、最新の医療水準ではなくて、事件当時の医療水準です。
事件当時、その治療法がすでに知られていたのか、その薬の禁忌が知られていたか、ということが重要なので、最先端の医療では困るんです。
でも最先端よりむしろ平成●●年当時、とかがなかなか難しいらしいです。
Kがときどき、縫合処置の本を見ながらやってみたそうな顔をしているのは、僕だけじゃなく、Kのボスも怯えているようですが・・・・
今ですか?幸せかって?
本格的なことを考えると不幸になりますから
Kのボスにこれなんだっけペンギン?と3回言われましたが、平気です。
平成24年12月11日 文責 弁護士 菊谷淳子