ほのかな恐怖世界 第４夜 リカちゃん

自称不遇の幼少期、私が通っていた小学校には、ありがちな噂がありまして １階女子トイレの右から３番目の個室に、リカちゃん人形の幽霊が出る この噂のせいで女子は決して一人ではトイレに行かず、誰かがトイレに行こうとすると男子から「右から３番目のリ～カ～ちゃん」とはやし立てられ、大変不自由でした。 　が、誰もつかいませんから我が校で一番きれいな場所です、入学当初から気が向いたときにのんびり本を読むのに使っていました。 リカちゃんですか 所詮は無機物ですから あるひの夕方、かなり遅い時間に、トイレに行ってから帰ろうと思って、いつもの個室にはいって、水を流しますと、突然、下から、 リカちゃん人形の首が浮き上がってくるではありませんか （（；ﾟДﾟ））） 無機物を馬鹿にしてはいけません。怖かったです。本当に怖かったです。一瞬は。 でも冷静になってよく見るとこの首、ものすごい力でもぎ取られていて、引きちぎられた胴体が意外と近くに捨ててありました。 胴体だけ、男子トイレの右から３番目の個室にちょこん、とすわらせて帰りました。 次の日から、トイレに向かってもはやしたてられなくなりました。 ところで、人間の感情には、怒り、喜びなど自分が何かを実際に体験して感じる感情のほかに、想像力がなければ発生しないものがあります。恐怖はまさに想像の産物です。 ただの無機物リカちゃんが一瞬でも怖く見えたのは想像の中で、何か付加価値をつけてしまったからです。 ところで、想像力がなければ発生しない感情の一つに、思いやり、があります。 家事事件で、安易に「主婦も働け」と言い放つ善男善女の調停委員様、３５歳頃に必死で求人雑誌をめくったことがあるのでしょうか。すがる思いで面接に向かったことがあるのでしょうか わいせつ図画頒布罪に問われている被告人に、安易に「正業に就け」と諭す裁判官、彼になぜそのような仕事しか機会がなかったのか、想像したことはなかったのでしょうか。 正業に就き、家族もいる被疑者に、安易に、長期の勾留を請求する検察官、普通の会社なら２０日も無断で休めば本人が解雇され、家族も路頭に迷うということを想像できないのでしょうか。 私は、想像力を忘れないようにしたい、と思います。 ところで、リカちゃん、やはり怖い話なんです。 おかしいわね、男子トイレには入ってないのに ・・・・・って担任の女性教諭がつぶやいていたからです・・・・ 　　　平成２４年８月２９日　分責　弁護士　菊谷淳子