ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

ほのかな恐怖世界 第3夜 いるはずのない者

菊谷、いつまでお化け屋敷に住みこんでいるのだ・・・・・と聞かれそうなこのごろですが、お久しぶりです。佳人薄命万年体調不良年中忙殺につき来年は初盆です。ボス熱烈歓迎御香典ですよ~ お化け屋敷で、金槌をもった男をよく見かけることに気が付き、ひとりでガクガクプルプルしていましたが、ある日、隣の荒れ寺のブースから、悲鳴が聞こえました。 どさ、という音も・・・・ あわてて助けに向かうと、落武者と金槌男。 ・・・・狙いは落武者だったのか・・・・ しかし、金槌男、倒れている落ち武者君には目もくれず、壊れた本堂の方で仕事開始。 そう、お化け屋敷は野外に設置されていたので、建てつけが悪いうえ、中が真っ暗ですから、よく事故が起こるのです。金槌男は、修理係だったわけです。 落ち武者が足を引きずって去っていく姿はそれはそれで臨場感がありましたが・・・・ ところで、土地の工作物の設置・保存上の瑕疵によって損害を被った場合、工作物責任民法717条)基づいて損害賠償を請求することができます。工作物責任では第一義的には「占有者」(1項)に、占有者が無過失を立証した場合には、「所有者」(2項)が責任を負います。では占有者とは誰でしょうか。 賃借しているテナントビルの瑕疵によってテナントの従業員が損害を被った場合、第一義的には直接占有者である賃借人のテナントが従業員に対し損害賠償義務を負うことになりそうですが、必ずしもテナントが責任を負うとはかぎりません 「占有者」が責任を負うのは、危険な工作物を支配・管理する者が、当該危険が現実化したことによる責任を負うべきであるとの考え方に基づくので、「占有者」が被害者に対する関係で土地工作物から生ずる危険を支配、管理し、損害の発生を防止し得る地位にあるかどうかが問題となります。 そうすると賃貸人しか工作物を支配・管理できない場合には被害者との関係では賃貸人が「占有者(間接占有)」となります。 裁判例では、吹きつけアスベストを使用した建物で就労していた男性が悪性胸膜中皮腫に罹患し死亡したことについて、賃貸人兼所有者に「占有者」として工作物責任を認めた例があります(大阪地裁平成21年8月31日)アスベスト工作物責任が認められた初めての裁判例としても有名ですが、直接占有者である賃借人ではなく、間接占有者である賃貸人を「占有者」として工作物責任を認めた判決としても注目されています。 さて、表題が「危険な職場」にならなかったのには理由があります。 私はその後、本当に震えながら持ち場を担当するはめになったのです。 お客様への「1番怖かった場所」のアンケートで、3、4枚こういうのがあったからです。 首洗いの井戸の親子が怖かった   平成24年8月27日 文責 弁護士 菊谷淳子