ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

であえ!

午前3時45分、カタカタパソコンに向かっていると事務所の入り口ドアが開く音が。 大体この時間にはわがボス井浦謙二もいるのですが、その日は珍しく帰宅しており、私1人。こんな時間に来る普通の人はいません。こんな時間に来るのは空き巣です。でも、心配はいりません。 脚元のダンベル(1kg相当)を両手で隠し持ちながら、にこにこと入口に近づき、何事もなかったかのような顔で「こんばんは~」といいながら、しれっとダンベルを投げつけ……… ようとしたら怯えた顔のボスが・・・・・・・ 家で寝つけなかったために事務所に仕事しに来たそうで。 死ぬほど怖かったそうです。 ところで、空き巣を私が返り討ちにしたとして正当防衛が成り立つのでしょうか。 ハロウィンで訪れた丸腰の高校生を大の大人が射殺しても正当防衛を認めるアメリカと違って日本の正当防衛の成立要件は非常に厳しいです。その要件の1つに法益権衡というものがあります。侵害されている法益とこちらが侵害しようとしている法益が同等でなければならないということです。 守ろうとしているのは財産権、しかし泥棒の身体への襲撃。 どう考えても同等といえず、過剰防衛になるような気がします。過剰防衛は違法性が阻却されませんから、有罪であることには変わりません。むむう・・・・ と、言いたいところですが実は泥棒に反撃したときには特別法があるのです。    盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律 盗犯を防止しようとしたり、盗品を取り返そうとしたときに、相手を「殺傷」(もあります!)した場合には、防衛行為があったものとされる、というものです。通常の正当防衛の要件の厳しさは何だったのか!と思うほどの緩さ。このような特別法は傷害などにはありません。盗犯だけです。 この法律が施行されたのは昭和5年。戦前ですからその価値観が反映されているのです。刑事法の考え方は時代時代の法益の考え方が反映されます。 物を盗まれそうになったとき、その犯人を「殺傷」(もです!!!)しても防衛行為とされるのに、より重要であるはずの人の身体という法益を守ろうとしたとき、例えば暴力を振るわれたときに反撃して殺したら正当防衛の要件が厳しくなる・・・・というのは、ちょっと変な感じがます。  ところで、ボスによれば泥棒が入ってきたら普通、隠れる、そうです。思いつきもしませんでした。そういえば何か物音がすると見に行くのは私、ボスは「どうだった・・・?」って・・・何かあったら香典ははずんでいただけますよね、ボス   平成24年4月11日 文責 弁護士 菊谷淳子