ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

空の上の鯉

恐ろしいものはたくさんありますが、私は高いところと狭いところが苦手です。その両方を容赦なく兼ね備えているものの一つが飛行機です。

ある日、現地に到着しようかといったころから、機体がひどくゆれはじめました。CAも着席しています。普段なら「気流の乱れによりゆれが続きますが、飛行の安全に影響はございませんので・・・・」というアナウンスが流れるのですが、その日はなんと、あの黄色い浮き輪の使用説明が始まりました・・・・上からもなんかマスクが降ってきて、「いよいよ感」が漂います。こういう時はいつもそうですが静まりかえります。

脳内を緊急ニュースのテロップが流れます。「乗客乗員272名全員死亡 邦人女性1名含む」

知っている神様全員にお祈りをします。

楽しい人生でした。

飛行機に一度乗ってしまえば、そこはもうまな板の上の鯉。自分ではどうすることもできません。これと似ているのが病気の治療です。

そして事故が起こった時、被害者にとってはもちろんですが、起こしてしまった側にとっても重大な結果が生じます。起こらないのが1番です。

航空機事故では運輸安全委員会から事故調査委員会という第三者機関が設置され、同じ事故が起こらないようにという制度が設計されています。しかし医療事故については厚生労働省ガイドラインに沿って、その事故の発生した当該院内での事故調査委員会が設置されるにとどまります。

残念ながら、医療過誤事件も航空機事故と同じく人間がかかわるものである以上、決してなくなるものではないと思いますが、起きた事故の原因を究明し同じ事故を防ぐことは可能でしょう。そして被害者にとってだけではなく,医療機関にとってもむしろ公正な調査とその後の予防にも良いのではと思います。

そこで医療事故にもちゃんと第三者がきちんと調査でき、どうして起こったのかはっきりさせる公正な調査委員会を設置しようという活動があります。まだ具体的な内容については固まっていないようですし、医師会と日弁連でも考え方に相違があるようですが、設置自体には厚生労働省も前向きです。

とはいえ日弁連はなんだか駆け引きがへたくそおっとりしている団体ですからお役所主導により制度設計で骨抜きにならないように祈るばかりです。

実は 私泳げません。口パクパクさせながら、海にどぼんだけはなりませんようにと知っている神様全員に必死でお祈りした日でした。

平成24年4月6日 文責 弁護士 菊谷淳子