ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

お山の大将放浪記

 このところ、知らない弁護士からよく電話がかかってきます。どこまでも続く総本山の大将日弁連会長選挙、その支持集めの電話です。  好きな言葉は博愛主義、しかし座右の銘御都合主義  人に何か言われたくらいで投票先を変更するつもりは決してありませんので「頑張って下さい!」と皆様に応援申し上げておきます。 日弁連は強制加入団体です。つまり、弁護士を名乗って仕事をするためには絶対に加入しなければなりません。しかしただではありません。所属会によって異なりますが月に数万円、 年貢 会費を納めなければなりません。 もし、 年貢 会費を滞納すると懲戒されます。「自由と正義」という業界紙にさらしものになります。この業界紙、私の知る限り弁護士はこの「 さらしもの 懲戒欄」しか読みませんので、一旦名前が磔にされますと、広く知れ渡ってしまいます。 大体200万円滞納すると除名(復活できません。市中引き回しの上磔刑レベル)という最も重い制裁が科せられます。ちなみにお客様のお金200万円横領だと業務停止2か月の処分(復活できます。期限付き江戸払いレベル)ですから、世間様に顔向けができないくらい弁護士会の年貢取り立てが恐ろしいものだとわかります。 ところで、最近は主に若手を中心として日弁連が強制加入団体であること自体をおかしいという論調が出ています。嫌でも会費を払って加入しなければならないのはおかしい、というわけです。 たしかに、弁護士会の活動にはあれ、と思うものもどうでもよさげなものも多く、会費も無駄に高いです。しかし弁護士自治を手放した場合にどうなるかということを忘れて日弁連の強制加入団体性を論じるのはおかしいのではないかと思います。 強制加入団体であるのは弁護士業界内で、所属する個々の弁護士をきちんと監督する能力を認められていることの証です。つまり、職務の公共性、公益性を担保するためには個々の弁護士への監督機能を持たなくてはなりませんから、強制加入なのです。もし仮に日弁連にその役割が担えなくなったら、その代わりを果たすのはおそらく法務省です。 日弁連加入弁護士と法務省監督下弁護士。民事の依頼者から見ればなんだか国からの監督を受けている弁護士のほうが信頼できそうに思えます。弁護士だって、会費を納めなくて良くて、しかもなんだか国のお墨付きみたいで、法務省監督下弁護士のほうがいいような・・・・。 しかし私たちの仕事の中には、国を相手にする行政訴訟や国家賠償訴訟もあります。法務省に監督を受けている弁護士にそのような仕事を依頼したいでしょうか。 まして刑事弁護人が法務省の監督を受けるなんてそれは由々しき事態です。  弁護士が国の監督を受けにさからえなくなれば、少数者の人権はおざなりにされます。 そして何より法務省は私たちに清き一票はくれません。 今ある弁護士自治というものの重みをきちんと認識し、その弁護士自治の運営を適正に行える人が誰かという意思表示を自分できちんと行うこと、司法制度をこれ以上放浪させないようにするため個々の弁護士に今できることはそれだけです。   とはいうものの、私も私の同業の友人たちも総本山にあまり期待はしていません。  若手弁護士は、別の道を模索している者も大勢おります。総本山に自分たちの未来を託すのはあまりに不安ですので自分の未来は自分で何とかいたします。さようなら。     平成24年3月30日 文責 弁護士 菊谷淳子