ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

遠くて近き道

 関東近郊I県某駅を降り、1日5本しかないバスのありがたい1本に乗りコトコト25分。それにしても寒いなあ、今日は・・・・

 と、いきなり宣伝が流れます。霊園の。かいつまんでいうと、

 春には様々な花が咲き乱れ♪

 猿回しも人気です♪

 大仏完備♪

 とその時、左手におもむろに大仏出現。や、宗教は間に合ってます。ありがたいというか不気味というか・・・・

 

 バスを降り、何とも頼りない看板を信じて薄暗い山道を歩き始めましたが、本当にあるんだろうか。携帯の電波、届いていません。

  近くて遠きは男女の道、遠くて近きはこういう道・・・・・

 さて、私が向かっていたのは、日本から帰国させられるおそれのある外国人が収容されている施設です。中には家族と引き離されて収容されている人も多くいます。

 この道を家族に面会するために訪れる人が不安を抱えながら往復しているのかと思うと、胸が痛みます。

 身柄拘束というのは、生命を奪うのに次いで大きな人権制約です。その人自身への負担もさることながら、面会にくる家族にも大きい負担を強います。誰かに捕まえられてどこかに押し込められるという人権制約にはそれを強いる必要性、許容性が必要です。

 逃げるおそれのない人まで収容する必要はないはずです。ましてどこからも遠い場所に収容することも必要ないはずです。

 彼らの身柄拘束について判断する人にはぜひこの道を一度通ってほしい。そして引き離された家族がそこに面会に来ることの大変さを知ってほしい、その上で、それでもやむを得ない拘束なのか慎重に判断してほしいと思います。

 遠くて近き道をまた1日5本しかないバスのありがたい最終の1本に乗って、ことこと帰り、今日初めてのご飯を食べました。 

2月8日  文責   弁護士 菊谷淳子