ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

恋人たちの行方

大阪土産で私がとても気に入っているお菓子があります。

   「面白い恋人」(株式会社よしもと倶楽部)

かの有名な北海道銘菓「白い恋人」(石屋製菓)と似て非なるパロディ作品です。

一字加えるだけで、全く意味が変わってしまう、このセンスの素晴らしさ。

一眼見せただけで、誰もが笑ってしまう、わかりやすさ。

東京で渡してももちろん、地元の友人に渡しても喜ばれ(あきれられ)お土産としては大変成功していました。大阪には地元で食べればおいしいものは多いのですが、銘菓と呼べるものはなかったので、これはいいお土産が見つかったと喜んでいました。

しかし先日、「白い恋人」が「面白い恋人」を訴えました。

商標権の侵害だとして、販売差し止めを求めたのです。

(※不正競争防止法違反でも争っているようですがここでは商標権のことだけお話します)

なんとまあ。

商標とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、業として商品を生産し、証明し若しくは譲渡する者がその商品について使用するもの、又は業として役務を提供し若しくは証明する者がその役務について使用するもの(商標法第2条)をいいます。

まあ、パロディですから確かに一見して似てはいますね。

でも、似ているからといって直ちに商標権侵害になるのでしょうか。

 そもそも、商標法の趣旨は「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)点にあります。

 つまり、商標制度は、商標を使用する者の業務上の信用の維持とともに一方で需要者の利益を保護しようというものなのです。

それでは果たして「面白い恋人」は「白い恋人」と間違えられるような商標と言えるのでしょうか。

 「白い恋人」は北海道銘菓として広く知られています。他方で「面白い恋人」は関西圏で販売されており、北海道で2人の恋人が並んで売られていることはありません。

 「白い」と「面白い」とでは意味も受ける印象も全く異なります。

 「白い恋人」、ってこうイケメンな、ロマンあふれる印象です。

 「面白い」方は・・・・顔じゃないですよ、ね、芸風で勝負ですよ。

 

 なかみは両方お菓子ですが、白い恋人はホワイトチョコの挟まれたラングドシャ、「面白い恋人はみたらし味の炭酸せんべいです。

 自分ではイケメンと付き合っているつもりが、傍から見たら・・・という錯誤はよくあることですが、事この恋人たちに関しては

 白い恋人を買うつもりで面白い恋人を間違って買ってしまった、

というようなことはまず考えにくいと思います。

むしろ、「面白い恋人」を見た人は本家の「白い恋人」も是非見てみたい、と思うのではないでしょうか。そうすれば両方の恋人は手を取り合って売上げを伸ばすことも可能なはずです。

 ただ、パロディはやはり本家の人気あってのものですから、やはり事前に通告して了解を得るなどのモラルがあってもよかったのではないかと思います。そうであれば、2人の恋人がいがみ合うこともなかったのではないでしょうか。あくまで私見ですが。

        2011年12月29日  文責 弁護士 菊谷 淳子