ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

かつお節は死のにおい

普段あける暇のない書斎。 久しぶりに友人と集まって卓を囲んでおりましたところ、あるはずのないかつおぶしのにおいが漂ってきました。自炊はほんだし使用ですので鰹節などあろうはずもない。そして私はこのにおいには修習生時代の強烈な想い出があります。それは 白骨死体の臭いです。 ほぼ骨になった白骨死体でもちゃんと「司法解剖」される場合があります。そしてにおいは腐乱死体とは別の種類の臭いでちょうど鰹節のような臭いがします。ご丁寧にカツオブシムシという名の茶色の小さな虫までびっちりつきます。 うちは整理整頓清潔そのものなんですが・・・・クローゼットかな・・・・ ところで、骨は骨でもまだ生きている骨の話です。 杖をついて自立歩行できる85歳の女性が、デイサービス(日帰りでサービスを受ける場所)の施設にて、トイレに行きたいと言いだし、トイレまでは職員が付き添ったものの、トイレ内への同行を本人が拒否したため単独でトイレに入ったが、トイレ内で転倒し大腿骨骨折の怪我をした。 さて、施設は損害賠償義務を負うでしょうか。 実はこの事案の裁判で、裁判所は1253万円の損害賠償義務を認めています。(横浜地裁平成17年3月22日)本人が拒絶しても一人で歩かせるのではなく、説得して便器まで歩くのを介護する義務があり、これを怠った点に義務違反があるというのがその理由です。 高齢者に間近で接する機会のある方はご存じだと思いますが、たとえ認知症になっても羞恥心というのはそう簡単になくなるものではありません。特に排泄に関する羞恥心は不完全な形をとっていても最後まで残っていることが多いものです。 卑近な例ですが、私の92歳になる認知症の祖母は排泄は完全に一人ではできませんが紙オムツは断固拒否し、汚した下着を隠し、家中に糞便とそのにおいをまき散らしています。肝心なところは自分でできないし、漏れていることも認識できないのに、紙オムツが恥ずかしい、とか下着は隠したい、という羞恥心が不完全ながらも残っているからです。そして彼らはこういうことには非常に頑固です。人間の最後の尊厳ですから。 女性自立歩行ができ、入所ではなく日帰りのデイサービスを利用している介護度の低い利用者にトイレ内への同行を拒否されれば、それでも説得を試みるのはまず困難でないかと思います。 そして、そもそも現に便意をもよおしている人にそんな説得を行う時間などあるのでしょうか、 もしかすると判旨のいう注意義務にリアリティを感じないのは私だけでしょうか。 こういう厳しい判決がばしばし出て、介護施設が激減し、裁判官にも高齢者の介護経験者が増えるまで、もし介護施設から相談をうければ、この判決を紹介して人間の尊厳より大事なのは法律です。羞恥心お構いなしにトイレ付き添い説得・強行せよとアドバイスせざるをえないのかな、と思います。 さて以前、ネットで「床下から2体の白骨死体。5年間居住していた男性、全く気づかず」というニュースを見て中川と「どんな生活してたんだろうね」と二人で笑っていたことももはや他人事ではありません。ああ、テロップが流れます。 クローゼットから白骨死体 5年間居住していた女性全く気づかず いや、まてよ(΄◞ิ౪◟ิ‵ ) クローゼットから白骨死体 住人女性事情聴取 楽しい人生でした。 友人達は所詮人ごとですので、宝探しでもするかのように目を輝かせています。 おどりこ( ◉◞౪◟◉)  水酸化カリウムがいいらしいよ しょうにん( ◉◞౪◟◉)  出汁くらいならとれるかも そうりょ( ◉◞౪◟◉)  ご供養なら格安で 先に家宅捜索してもらった方がまだマシな気がしてきました (続く)   平成26年9月22日 文責 弁護士 菊谷淳子  ※ 水酸化カリウム 毛髪なども解かすことができる薬剤。毒性が強く主に業務用の洗浄剤として使用される