耳よりなお話
寒い夜、ちょっとご近所まで歩いて向かわなければならなくなったボス(⊙◞౪◟⊙)が、耳元が寒いの嫌だからなんか耳を隠すようなものない?といいます。
お貸ししたいのはやまやまなんですが…
事務所常備の私の愛用防寒グッズはこの二つしかありません
これか
これ
ボス(⊙◞౪◟⊙)の反応は、まさかのものでした。うちひとつを手にとり…
これいいね、あったかそう…
さて、耳に関係するお話です。
刑事事件の捜査では、警察官や検察官が被疑者(被告人)や証人から供述を聞き取って「供述調書」というのが作られます。
従来の裁判ではそのうちの全部または一部が証拠として採用されます。もちろん一通の供述調書のうち一部を弁護人が不同意にして黒塗りにする、ということもありますが、基本的にはその供述調書をはしょらずに裁判官が読み、判決を書く材料にしています。
この供述調書は1通とか2通とかいうことはあまりなく、少なくとも数通、ものによってはかなりの頁を有するものもあります。
そんなことから、年齢・学歴・経験不問で無作為に集められる裁判員裁判では、裁判員が調書を読むことは到底できないだろう、ということで、
裁判員の皆様はほぼ「耳で聞いた」証言のみを元に裁判をなさいます。
供述調書というのは、実は捜査機関の作文ですから好きなように作ることができます。その点は従来批判されてきたところです。ですから公判での証言のみで裁判をするという考え方にも合理性はあります。
しかし、物事を考える時には、何度も何度も聞いたことを検証し反芻する必要があります。ある人の証言が他の人の証言と矛盾しないか、聞いたときにすぐにわかるわけではありません。
これまでの調書重視の裁判に問題があったとしてもせめて公判での証言をちゃんと調書にし、各証人の証言を反すうする必要があるのではと思います。
裁判員裁判にかかる裁判は、刑事事件のなかでも一定の重大犯罪です。つまり被告人にとってはより重い刑が科される可能性のある事件です。もし、自白事件ではなく被告人事件が無罪を主張している完全否認事件であっても、そうした慎重な検討を経ずに一度耳で聞いただけのことで判断されてしまうのだとすれば恐ろしいことです。
刑事裁判はその被告人に対し、本当に有罪なのか、その刑を科するのが本当に妥当か、を真剣に必死で検討するべきところです。ご近所の北の王国みたいに、なんだかわからないまま捕まえられて、あっという間に死刑…なんてことにならない法治国家であることを担保するのは刑事裁判に被告人の手続保障がなされていることなのです。
我が国の優秀な刑事裁判官は、問題ない、調書をちゃんと我々がちゃんと誘導する、あれがごっこだからね、素人が判断するわけではないから安心せよと内心はかんがえていらっしゃいるはずです。
市民に事実認定までご参加いただくのですから、そんな慎重に供述調書を検討してもらう時間など設けていたら、裁判員への保障も必要だしね、ええ予算が足りない。お客様(お裁判員)のご機嫌も損ねるしね。はしょるしかないの。え?被告人、まあ大丈夫ですって。たいていの場合は。そういうところでしょう。
そして忘れてはならないのは裁判員裁判には、例えば飲酒運転などでの交通事故(過失犯)でも該当します。一般の市民とそのご家族がこのすてきな裁判員裁判の被告人となる可能性は、裁判員に選ばれる可能性よりはるかに高いのです。
私などの若輩ですらそう思うのに、市民派とか人権派を標榜される弁護士が、このことを看過して裁判員裁判に人権万歳をしているのを見ますと、世も末だなと感じます。
さて、わがボス(⊙◞౪◟⊙)は第1の品を身につけてでかけました。
その姿は昔のお笑い番組のキャラクター「小須田部長」を思い出しますが、第2の品ではおまわりの皆様から注目されそうですからその方がよかったと思います。でも、第1の品は…
ボスが知っている人に誰にも出会いませんように。
平成26年1月30日 文責 仕方なく第2の品で帰宅した部下