ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

return to 星国③ 見えざる立ち位置

友人たちはカジノに戻ったと思っているようですが、 品行方正な所持金しかないので海辺でじっと手を見ています。 心の友、マーライオンもこう語りかけてくるように…思えます。 2386.jpg 今日もすったのかい(΄◞ิ౪◟ิ‵ )  さて、ある刑事事件で、裁判官から被害者の意見陳述を読み上げます、と言われたことがあります。 ピンで 、ごほ、単独で裁判をするようになって1、2年というところの裁判官です。  この事件は被害者が非常に凄惨な亡くなり方をした事件ですが、被告人にも事情があり、執行猶予がつくかつかないかのぎりぎりくらいの事件でした。裁判官も結果の悲惨さから執行猶予をつけるのは躊躇しただろうと思います。  なので、裁判官が読み上げます、といったのは執行猶予をつけることとのバランスをとったのかな、と一瞬思いました。本来は、裁判所は被害者の代弁者ではありません。読み上げるなら検察官がすべきです。内心は複雑でした。でも、まあ裁判官が読み上げるのだからそれなりに整理された文面だろうし、 結果が、その執行猶予なら、ごほ。 が、裁判官の読み上げた被害者の意見は、予想を超える非常に感情的でそれはそれは峻烈なものでした。あの壇上、被告人の正面から、その容赦のない非難、批判を約数分間浴びせ続けました。 正直、私自身その内容のとんでもなさには、怒りがこみ上げてきました。 怒り狂って名誉毀損で訴えてやろうかと思ったくらいです。 こんなもの、そこから、読み上げるかね…   判決を読みますといろんな事情をきちんと拾い、実によく考えて判決を書かれていました。非常に優秀な裁判官だったと思います。決して変なアレ (΄◞ิ౪◟ิ‵ )ではありませんでした。 被害感情に歯止めがかからないことくらい、わかっています。それはいいでしょう。  でも結構いい裁判官なのに、そんな方でも立場上わからないんだろうな、と残念に思ったことが1つあります。  被告人の反省がどこからくるのか。  人の心というのは自分を中心に回っています。刑事被告人というのは、たいていがそれなりの境遇に置かれています。  被害者感情を思い知らせたり、非難したりすることで心から反省するということは決してありません。  自身の置かれた状況を理解しそこに心を寄せてくれる人がいる、と思って初めて自分を正当化しないようになり、自分のしたことを客観的に反省できるようになるのです。  7ヶ月間もの間、被告人と何十通もの手紙をやりとりし、飛行機で片道3時間半かかる接見にも可能な限り通い、そのやりとりの中で、被告人の人となり、置かれた状況を一生懸命理解しようとしてきました。数ヶ月かかって被告人はようやく心から罪を悔い、被害者遺族への心からの謝罪が芽生えてきたところでした。一緒にお詫びに行きたい、という話も出てきたところでした。記録にでているわけではありませんから、裁判官からは見えないところです。裁判長クラスの年期が入ってくるとわかっておられる方もいらっしゃいますが、見えないんですもの、仕方がない。  7ヶ月かけてやっと芽生えてきた心からの反省を、一瞬で凍り付かせてしまったあの意見陳述、その後どうなったのか、あの裁判官に出会ったらいつか教えてやりたいと思います。 さて、見る位置が変わりますとね、 心の友のマーさんのお言葉も違って聞こえます 2371.JPG ツキはこれからや (΄◞ิ౪◟ิ‵ ) 平成25年5月13日 文責 弁護士 菊谷淳子