ミモザノヘヤ

高田馬場の弁護士の日記です。

溶ろける気持ちをこめて

ダイオキシンやら環境ホルモンやら物騒だった私の学生時代、私は1階と2階のそれぞれに台所とトイレがついているシェアハウスのような家に住んでいました。 住んでいたのは女子学生ばかり4人。もちろんバレンタイン前夜はチョコレートの匂いが立ち込めました。 その年、化学系修士Tちゃん(仮名)はなんだか普段より一層気合いを入れてチョコレートを作っていました。 私が夜帰宅したときには、すでにとろとろのチョコレートが鍋いっぱいに入っていました。 ちょっと味見を…とその時、横からTちゃんが、素早く飛んできて、絶対に手を触れるな、といって別のチョコレートをくれました。  Tちゃんは普段とてもおっとりした温和な人なのですが、 その時はなんだか有無を言わせない空気でした。 さて、民法上、所有者の異なる複数の物が結合し分離が困難になった場合を添付(民法242条以下)といい、その種類によって付合(民法242条以下)混和(民法245条以下)加工(民法246条以下)に分類され、いずれも所有者は民法の規定で決まります。  よく争いになる例としては借りている土地に樹を植えた場合の樹木の所有権、賃借人がした増築部分の所有権、などです。  盗んできた部品を自分の持っている機械にくっつけて修理した場合は、盗まれた部品も含めて所有権はまるごと盗人のものになってしまいます。  一見不条理そうですが、盗人だからと言って機械の所有権まで失うとすればそれはおかしいということにはすぐに気づくと思います。  盗まれたから、ということではなく、部品が機械にくっついてしまったらその状態を優先した方が合理的、という考えに基づきます。損失は補償すれば公平は保てるのです。実際に可能かは別として…   ※ もちろん部品を盗まれた人はその分償金請求(民法248条)ができます。    ところで、Tちゃんの様子が何だか変だと思って鍋をよく見ると、おかしなことに気付きました。 ゴムベラのヘラの部分が消えています あの、ゴムベラさんが大変なことに…ლ(◉҉ืൠ ◉҉ืლ) Tちゃんはさくっと言いました。 いいの、大丈夫(◞≼●≽◟◞౪◟◞≼●≽◟) 何だかそれ以上聞いてはいけないような気がして、それ以後の話は聞かなかった私ですが、見たのです。Tちゃんが、 次の日笑いながら鍋捨ててました(΄◞ิ౪◟ิ‵ )   チョコに込められるのは愛とは限りません    平成25年2月14日  文責 弁護士 菊谷淳子