夕日を追いかけて
久々に友人に会いに、洞爺湖へ向かいました。
私はこの友人から10年ほど前、洞爺湖への帰らぬ旅に出ることにしたので後の始末をよろしく、目印に赤いハンカチを結んでおく、という物騒な手紙を受け取ったことがあります。
さて、法律で10年というとすぐに頭によぎるのは債権の消滅時効(民法167条1項)ですが、実は債権には短期消滅時効がいろいろと規定されていてます(民法168条以下)。
たとえばお医者さんの診療報酬債権の消滅時効は民法上3年です(民法170条1項)。
では「公の施設」である公立病院の診療報酬の時効はどうでしょうか
実は「公の施設」の利用料については地方自治法236条1項で、「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。」と規定されています。
実は公立病院について最高裁判所は「私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく,その診療に関する法律関係は本質上私法関係」であるから、民法の3年が適用されると判断しました。(最高裁第二小法廷 平成17年11月21日)
というわけで3年です。3年踏み倒せば・・・・、ごほ、まあ、その。
さて10年前
手紙を受け取った後まさかと思いながらすぐに洞爺湖に向かうと
本当に指定された場所にハンカチが結んでありました。
人には時々死ぬよりつらい苦しいことがあり、
命を失う恐怖より、その苦しみが続くことの方に耐えられないことがあるということは
私にも最近少しわかるようになりました。
生きていてほしかったな・・・という気持ちがないといったらうそになりますが。
本人からの連絡はそれからありません。
友を偲び。題して「伝えたい想い」
あの時の後始末の諸経費
時効援用するなよ
平成24年1月15日 文責 弁護士 菊谷淳子